教授挨拶
教授 上原 久典
私は、徳島大学卒業後、当時の病理学第二講座(後に環境病理学分野、現在は疾患病理学分野)に大学院生として在籍し、大塚久教授、泉啓介教授のもとで病理学の基礎を学びました。さらに、平成6年より助手、11年より講師、13年より助教授、後に准教授として同講座で教育、研究、病理診断に従事してまいりました。平成28年に病院病理部の診断業務の負担増加への対応と、若手病理医の獲得・育成のために病院病理部に教授職が設置され、私が初代教授に就任することとなりました。
徳島大学病院病理部は、徳島大学医学部附属病院病理部として平成13年に設置され、以後2つの医学部病理学講座が診断を受け持つ形で運営されて参りましたが、平成15年に病理部専任の准教授として、佐野暢哉先生が就任されました。さらに平成20年からは坂東良美先生が業務を引き継がれました。病理部に専任の医師が就任された後も病理学講座は診断の一部を受け持ち、病理部と医学部、歯学部の病理学講座は常に協力して徳島大学病院の病理診断を行ってまいりました。今後は、さらにこの関係を強固なものにしていきたいと考えております。
徳島大学の病理診断件数は、10年前は年間5000程度でしたが、現在は年間8000程度まで増加しています。さらにひとつひとつの病理診断に求められる情報量も著しく増加しています。例えば、通常のHE標本だけで診断がつかない、あるいは治療標的となる分子の発現状態を知りたいという場合に、免疫染色という手法を用いますが、この免疫染色のオーダーは5年前と比べて現在は倍になっています。このように病理診断1件当たりの負担は年々増しており、全国的にも同様の傾向です。それに対し、病理医は全医師の1%、専門医は全国で約2100名しかいません。2008年の日本医師会の調査でも診療科別で不足する医師の第1位(充足率26%)に挙げられています。このように病理医不足とそれに伴う診断業務の負担の増加は深刻な問題です。できるだけ多くの病理医を目指す人材を獲得・育成していくことが私に期待されている課題の1つと認識しています。
同時に、病理診断の質・精度の向上や、大学病院ですので、診断に重点を置いた臨床病理学的研究も推進しなければなりません。将来的には、分子診断や地域の病院とのネットワークの構築(いわゆるテレパソロジー)も推進していきたいと考えています。
このようにやらなければならない課題は山積みですが、病理学講座、臨床各科と連携・協力しながら実現していきたいと思います。
今後の皆様方のご協力、ご支援をよろしくお願い申し上げます。